す〜ぱ〜るーみっく  〜ラムとあたるのハチャメチャデート〜

 <ザ――……>
 「げ、雨だ!」
 戦国時代に来てから、雨というほどやっかいな物はない。簡単に雨宿りできるところはないし、一度変身したら、お湯をかぶることも現代ほど楽ではないのだから。
 何も出来ぬまま、乱馬は女になってしまった。
 「ったく、なんでこんな時に……。」
 「私は何も知らないわよ。」




 「ダァリーン!今日がデートの日だっちゃよ!」
 「わかってるよっ…」
 あたるは少し不機嫌そうに答えた。ラムの方は楽しそうにデートの準備をしている。
 「簡易タイムマシン……あ、あったっちゃ!」
 それを手に取ると、目隠しをしてからセットを始めた。
 (とりあえず、未来よりも過去に行ってみたいから、適当にこのダイヤルを左に回して……このくらいだっちゃ!)
 目隠しをはずし、日付と場所を見ないように注意しながら近くにあったお茶碗に付けた。ただ白かっただけの茶碗の底が、青空になっていく。
 「ダーリン、準備はできたっちゃ?」
 「……できました。」
 「じゃあ、行くっちゃ!」
 そう言ってラムは茶碗の中に飛び込もうとしたが、途中で止めてしまった。
 「あ……うちちょっと忘れ物したっちゃ。ダーリン、少し待ってるっちゃ!」
 ラムは部屋を出ていった。




 「おい……これどうなってんだ?」
 「私に言われても……」
 らんまとあかねは水たまりを見ていた。ついさっきの雨で出来たのだが、ほんの数十秒前にとてもまぶしく光ったのだ。それからは何の変化もないのだが。
 「ちょっと……のぞき込んでみる?」
 「……あぁ。」
 二人は水たまりをのぞいてみた。そると、それぞれの顔と一緒に、その奥にどこかの家の天井が見えた。それも、戦国時代の家とは思えないような。
 (なんなんだこりゃあ……)


 (ラムの奴、いつまで待たせる気なんだ。)
 まだ二分ほどしか経っていないのだが、あたるは待ちきれないようだ。
 ちょっとした好奇心からか、茶碗の中をのぞき込んだ。すると、そこに見えたのはとっても可愛い二人の女の子。


 「あ、あっちに誰かいるわよ!?」
 「本当にどうなってんだ!?」
 二人が驚く暇もなく、

 「おじょーうさん!」

 「きゃあっ!」
 「い゛っ!?」
 水たまりから男の手が伸びて、二人をしっかり掴み、中に引きずり込まれてしまったのだ。




 「ねぇねぇ、住所と電話番号教えて!」
 「その前に、おめぇ誰だよ!?」
 あたるはなぜからんまにばっかり話しかけている。
 「え〜とねぇ、僕は諸星あたる、友引高校の二年生で〜……」
 「……じゃあ、ここはどこなんだ!?」
 「ここは僕の家だよ。」
 「はぁ!?」
 (なんで戦国時代とこんなところがつながって……!?)
 「ねえ、乱馬。ここ……もしかして元の世界なんじゃない?」
 そんな中、あかねが近くの窓を見ながら言った。
 「え…!?」
 「だって、ここの窓からの景色……あんたも見たことあると思うけど。」
 「本当か!?……だぁっ、てめー放せ!」
 らんまはあたるを一発殴ると、あかねと一緒に部屋の窓をのぞき込む。
 友引町のようだ。練馬区からもバスで行けば、それほど遠くはない。
 (そういえばあいつ、友引高校とか言っていたな……)
 友引高校といえば、宇宙人がいると言う噂で有名な学校である。九能先輩と互角と言われるほどの剣道の強さの持ち主や、あかねのような怪力女もいるらしい。また、毎年さまざまな行事が行われているという。
 (なんだかよくわからねぇけど、戻って来られたんだ……)
 ここであかねがあることに気づかなければ、二人はこのまま元の時代へと帰っていったであろう。
 「……でも良牙くんを置いてったままじゃ……。」
 「あいつは元々迷ってあの時代に来た奴だから、別に探さなくてもいいぜ。」
 「じゃあPちゃんはどうするのよ?」
 「あの豚かぁ〜?あんな奴ほっといても別に……」
 「ほっといていいわけないじゃない!あっちの時代に戻ってPちゃんを見つけてからじゃ……」
 「……はいはい……。」
 (ったく、あいつの正体バラしたくなるぜ……)
 その時、
 「おじょーさん!」
 「わっ!?」
 さっきまでらんまに蹴られて気絶していたはずのあたるがまた抱きついてきた。
 「あ、あのなぁ!俺は男だっ!」
 「え?この感じは絶対に女の子なんだけどな。」
 (そ、そりゃーなー、そーかもしれねぇけど……)
 「あのねぇ、本当にこの子は男なんだってば!」
 その時……
 「ダーリン、なんだか騒がしいけどどうし……」
 ラムが部屋に戻ってきた。忘れ物とは手に持っているカメラのことだったらしいが、
 「ダーリン……!」
 今はそんなことなどどうでもいい。
 「何やってるっちゃ―――!?」
  <バリバリバリッ>
 「ふぎゃーっ!?」
 あたるはその場で気絶した。
 「ったく……なんなんだこいつは…」
 「ダーリンが変なことしてごめんだっちゃ。二人とも、どこから来たのけ?」
 「なんかよくわからないけど……あの茶碗の中から……」
 「茶碗の中だっちゃ!?」
 あかねの言葉に少しラムはびっくりした。
 「あのー、もう少し話を……」
 そんな中で、
 「あの、おじょーさんぼくと……」
 あたるはまたいつの間にか起きあがり、
 「だからやめろってバカヤロー!」
 らんまに抱きついている。
 「その前に……この人にお湯かけて下さい。」
 「わかったっちゃ!」
 ラムはどこからかやかんを持ってくると、らんまに思いっきりかけた。
 「………………。」
 乱馬の変わり様にラムは一瞬声が出なかったが、まだ気づかずにあたるが抱きついているのでとりあえず言ってみる。
 「………ダーリン、いつまで抱いてるのけ?」
 「へ……?」
 あたるが顔を上げると、さっきの女の子はどこにもいない。抱きついていたのはおさげの少年。
 「これでわかっただろ、一応。」
 少しあたるは戸惑っていたが、
 「……だったら、こっちのおじょーさ…」
 今度はあかねに抱きつこうとし、
 「「やめーい!!」」
  <どがしゃーんっ>
 ダブルキックをくらって飛んでいった……。



 「あなたたちは誰だっちゃ?」
 「私はあかね。となりは乱馬。」
 「そう……うちはラムっていうっちゃ。それで、どうしてここに来たのけ?」
 「あのー、それが……水たまりが光ったから何かなと思ってのぞきこんだら、急にさっきの男の人に引きずり込まれちゃって……ねぇ。」
 「ったく、びっくりしたぜ。」
 「本当にそれはごめんだっちゃ……ダーリンは女好きだから、可愛い子がいるとすぐ飛びつくっちゃ。」
 (あれ……確かマシンは過去に設定したのに、この人達うちらとほとんど変わらないっちゃ!)
 「…二人もどこから来たのけ?」
 「さっきも言ったけど……茶碗の中から。」
 「そうでなくて、どこの時代から来たのけ?」
 「えーと……2001年だっけ?」
 「2002年だろ。」
 「2002年だっちゃ!?」
 その言葉でラムはさっきよりもびっくりした。
 (あれ……時が変わってないっちゃ。またメカの操作間違えたっちゃ?)
 「そんなに考えて、どうしたんですか?」
 「茶碗に小さな機械がついてるっちゃ。それは簡易タイムマシンといって、セットした時と場所に行けるんだっちゃ。でも、確かにうちは過去にセットしたはずなんだっちゃ……」
 「あ、えーと、私たちは2002年にいたんだけど……どう言ったらいいんだろ。」
 「あることで500年前に行っちゃって、そこからまたここに来たんだろーが。」
 「そうそう、そういうこと。でも、Pちゃん見つけなきゃ……」
 「わかってるよ。」
 「Pちゃん……?」
 「あ、ラムさんには関係ない事よ。とにかく、私達はまたあの時代へ戻るんで……」
 「じゃあ、またあの茶碗の中へ入るっちゃ。」
 「うん…。」
 乱馬とあかねは茶碗の中へ入っていった。それとほぼ同時に
  <どがっ>
 あたるが空から落ちてきた。
 「さぁダーリン、デートするっちゃ!」
 「お、おい、ちょっと待て。さっきのかわい子ちゃんはどこへ行った?」
 「もう茶碗の中へ入って行ったっちゃ。」
 「なにぃ!?よーし、俺も行……」
 「ダーリンはうちと一緒にデートするっちゃ。」
 「ちっ……」
 ラムとあたるも少しわざと遅れて茶碗の中へ入っていった。





 「ダーリン、これで五回目だっちゃよ。」
 「…………」
 道の途中にて。あたるは道を歩く可愛い女の子を手当たり次第に口説こうとし、その度にラムに電撃を喰らわされる。
 「何でダーリンはいつもガールハントするのけ?」
 「…………」
 「言わないとこうするっちゃ。」
 ラムはどこからかロープを出すと、それであたるをしばり、ロープのはじを持った。
 「な、何すんだよ!」
 「これでガールハントはできないっちゃ。さーデートするっちゃー!」
 (これのどこがデートだよ……)


 数分後。
 「ダーリン、そろそろ昼ご飯にするっちゃ。」
 しかし、あたるの声は聞こえない。
 「ダーリン……?」
 振り向くと、あたるはいない。ロープの先はいつの間にか丸太になっている。かなり遠くで走っているあたるが見えた。
 「ダーリン、どこ行くっちゃ―――!?」





 「良牙くん……本当に会わないわね。」
 「ったく、何やってんだかあいつは。」
 そんな時である。
  <ドー…ン……ドー…ン……>
 地面の下から、何か音がしている。しかもそれは、どこかで聞いたことがあるような音だった。特に乱馬には。
 「……地鳴り?」
 「いや、耳を地面に当ててよーく聞いてみな。」
 「え?」
 とりあえず、あかねは言われた通りにやってみる。すると地面の下からは爆発音の他にも声がする。

 「ったく、ここは一体どこなんだ……爆砕点穴!」
  <ドォォ…ン>
 「乱馬の奴、こんなフザケた世界に連れて来やがって……爆砕点穴!」
  <ドォォ…ン>

 「………」
 (良牙くん、こんな所に……)
 「な。」
 「…でも、このままだと気づかないでどっか行っちゃいそう……」
 「……しゃーねーな。」
 乱馬は少し前に歩くと、地面に向かって
 「良牙のぶゎっかやろ―――っ!」
 と思い切り叫んだ。
 「……んなこと言っても聞こえないんじゃないの?」
 少し呆れたように言うあかね。しかし、

 (乱馬の野郎、俺にこんな事が聞こえていないと思ったら……)
 ちゃんと聞こえていたりする。

 「早く出て来ねぇとあることを言っちゃうぞー!」

 (…大間違いだぜ。)

 「良牙はP……」

 「獅子咆哮弾!」
  <ドォォォン>
 「ぐえっ!」
 「あ……。」
 乱馬のいるところの地面が盛り上がったかと思うと、そのまま真上に飛ばされてしまった。
 「乱馬――っ!俺がいないからって、二度とそう言うこと言うなよ―――っ!!」
 その穴から良牙も出てきた。
 (聞こえてたんだ……)
 「あの、良牙くん……」
 「あ、あかねさん、何でしょうか?」
 「えーと、さっき乱馬が言っていた「P」って何のこと?」
  <ぎくっ>
 (い、今更俺がPちゃんだなんてとても……)
  <みしっ>
 「せっかく助けてやったっつーのにこの方向オンチ!」
 飛ばされた乱馬は落ちてくるついでに良牙の頭を踏みつける。
 「だったらんなこと言うんじゃねえっ!」
 「じゃあ、他に何を言ったら出てくるんだ?Pちゃん。」
 「誰がPちゃんだっ。」
 「誰がPちゃんかな?」
 「「P」って……Pちゃんのこと?」
  <ぎくぎくっ>
 「あれ……良牙くんどうしたの?」
 「それはな、良牙の……」
 「言うな――――っ!」
 良牙は乱馬を思いっきり殴った。
 「え、えと、俺は、まったく、Pちゃんとは、関係がない、いや、ある、その……」
 (あ゛〜〜〜っ!もうダメだ―――っ!!)
 かなり混乱中の良牙。
 「へえ……良牙くん、Pちゃんが好きなのね。これからもどんどんかわいがってね。あれ、そういえばPちゃん一体どこに……」
 「だからな、それは良…」
 「言うんじゃねえっつーに!」
 「でも、あかねがニブくてよかったな、Pちゃん。」
 「………」
 良牙の耳元で乱馬がささやいた。






 昼頃。
 「犬夜叉、もうそろそろ昼ご飯にしない?」
 「あぁ?てめーらもう腹へったのかよ。俺は全然………」
 そう言いかけた所で、犬夜叉のお腹がグ〜と鳴った。
 「腹の方は素直じゃのう。」
 「だぁっ……うるせー!」
 (ん………!?)
 どなりかけた犬夜叉は急に表情を変え、森の方を見る。
 「どうしたの、犬夜叉。」
 「何か来やがる……しかも一人は今までに嗅いだことのねぇ臭いだ。」
 犬夜叉が言い終わるか終わらないのうちに
 「おねーいちゃん!」
 「きゃっ!?」
 森からいきなり男の人が出てきて、かごめに抱きついた。普通の人間のようだが、服装はこの時代の物ではない。
 「ちょっ、ちょっと何すんのよ!?」
 「てめえ、かごめに何しやがる!?」
  <ごんっ>
 犬夜叉は男の人を殴った。
 「いててて……ではこちらの方は……」
 男の人は珊瑚に行こうとしたが
  <みし……>
飛来骨で殴られそのまま気絶した。
 「こいつ……一体何者?」
 「見慣れぬ服を着ておるのう。」
 かごめ達はのびた男の人を見ていたが、犬夜叉だけは男の人が出てきた森の方を見ている。
 (……今度こそ、なんだかわからねぇ奴が来る。)
 そこへ森からもう一人、女の人が出てきた。
 「ダーリン、やっと追いついたっちゃ。」
 髪は玉虫の羽のような青緑色、頭には角が生え、宙に浮いている。どう見ても人間ではない。
 「お、鬼じゃ〜!」
 「うちは鬼なんかじゃないっちゃ!」
 驚き、あわてながら言う七宝。その言葉に女の人はすかさず即答した。
 「てめぇ……一体何者だ?」
 犬夜叉は女の人を睨んで言う。
 「別に怪しい者ではないっちゃ。」
 「どこが怪しくねぇんだよ!?てめえは人間でもねえ、妖怪でもねえ、半妖やらまして死人の臭いでもねえ、今までに嗅いだことのねえ臭いがしやがる!」
 「確かに違うけど……」
 「じゃあ何者だ!?」
 「うちインベーダーだっちゃ。」
 「……いんべえだあ?」
 「だっちゃ。」
 犬夜叉は少し考える。もちろん、インベーダーと言う言葉なんか一度も聞いたことはない。
 「法師様、いんべえだあってなんだかわかる?」
 「いえ、私でもこの言葉は初耳です。」
 「かごめ、いんべえだあってなんじゃ?」
 「え……何と言ったらいいのか……」
 言うまでもなく、「インベーダー」の言葉の意味を知っているのはかごめだけ。
 (この人、本当に悪い人じゃないみたい……)
 しかし、それを簡単に戦国時代の人に教えることはできないだろう。下手なことを言えば妖怪と誤解されかねない。
 「犬夜叉、あんたは黙ってて。私だけで話すから。」
 「……しゃーねーな。」


 「ねえ、まず名前なんて言うの?私はかごめで、この人は犬夜叉。」
 「本当に犬の耳生えているっちゃね〜。触ってみたいっちゃ。」
 女の人は犬夜叉の耳を見る。
 「……触るな。」
 「そして、弥勒様と、珊瑚ちゃんと、この子は七宝ちゃんっていうの。」
 「うち、ラムって言うっちゃ、そして、この人はダーリンだっちゃ。」
 「だーりん?」
 「………おい。」
 ダーリンという言葉に反応したのか、あたるが目を覚ます。
 「俺の名前はダーリンじゃないだろ。」
 「あ、そーだった、あたるっていうっちゃ。でもダーリンやっと目を覚ましたっちゃ、うち嬉しいっちゃ〜〜!」
 「こ、こらっ、人前で抱きつくな!」
 いきなりラムがあたるに抱きつくのを見て犬夜叉一行は驚く。
 「いくら法師様でもあんなことはしないのに……」
 「おまえがいるからできないのですよ。」
 「…弥勒、それってどういう意味じゃ?珊瑚がいないところではやっておるのか?」
 「あ、それはその……」
 「あのー、それで、あなたたちはその服からしてこの時代の人じゃないと思うんだけど。」
 「そうだっちゃ。うちらは約500年後から来たっちゃ。」
 (やっぱり……)
 「どうやってここに来たの?」
 「簡単だっちゃ。タイムマシンでここに来たっちゃよ?」
 「……何のために?」
 「もちろんダーリンとデートしに来たっちゃ!」
 「さっきまで人をロープにつなげて、これのどこがデートなんだよ!?」
 「ダーリンがすぐガールハントに行くのがいけないんだっちゃ!」
 あたるが話に割りこんだとたん、ラムとあたるの口喧嘩になってしまった。
 「……………」
 かごめは頭をおさえる。
 (こんな所でデートって……どうやってするんだろう………)
 「かごめ、だぁりんやらたいむましんやらでぇととか、俺が聞いたことのねぇ言葉がたくさんあるんだけどよ……おまえの国の方言か?」
 「いいの、犬夜叉。気にしないで。」

  <ぐぅ……>

 「今の音、何?」
 「…………」
 あたるは少し恥ずかしそうにそっぽを向いている。
 「ダーリンのお腹の音みたいだっちゃ。」
 痴話ゲンカ(?)の途中だったが、いきなりあたるのお腹の音が鳴ったのだ。
 「そういえば、もう昼過ぎだっちゃね……ダーリン、うちの手料理食べるっちゃー!」
 「おまえの手料理なんか誰が食うかーっ!」
 あたるはまた逃げようとしたが、
 「このゴタゴタですっかり忘れてたわ。こっちもお昼にしましょっ。」
 かごめがそう言ったとたん、
 「そうそう、君の手料理ならしっかり食べるよ。」
 あたるがかごめに近寄ってきた。
 「あの、私の方は手料理じゃないんだけど……」
 「それでもいいさ、君がここにいるのなら。」
 「てめえっ!」
 「ダーリン!」
  <ピシャー……ン>
 犬夜叉があたるを殴り、ラムが電撃をあてる……はずが、あたるの逃げ足がとんでもなく速かったのか、あたるは犬夜叉の攻撃を避け、ラムの電撃は犬夜叉にあたってしまった。
 「ご…ごめんっちゃ、大丈夫っちゃ?」
 「一応な……」
 「……わざわざ私の隣に来なくても、ちゃんと食べることは出来るでしょ。ね?」
 「本当はそこにいたかったんだけど……仕方ないなぁ。」


 そんなわけで、やっと昼ご飯になった。ちなみにあたるは珊瑚の隣に行ったらまた飛来骨で殴られ、結局しぶしぶラムの隣にいる。
 「えーと……あ、あった。」
 かごめはリュックの中からいくつか缶詰を取り出す。
 「今回はまた変わった食べ物じゃのう。」
 「これって、かごめちゃんの国の保存食なの?」
 「まぁ、そのようなもんだけどね。」
 「かごめちゃん、お弁当とかはないのけ?」
 「私達はラムさんたちと違ってこの世界で旅をしているから、めったにお弁当はないのよ。」
 「ふぅん……とりあえずいただきます、だっちゃ。」
 ラムとあたるも缶詰を食べ始めたが、犬夜叉だけは不満そうな顔をしている。
 「かごめ、あれはねぇのかよ?」
 「何よ、あれって。」
 「かっぷめんとかいうやつ。」
 「……はいはい、これで最後よ。」
 かごめは犬夜叉にカップ麺を渡した。
 「うちのも出すっちゃ。」
 ラムもカバンの中から密封されていた弁当箱を出す。
 「ま、待て。おまえのは……」
 「とにかく開けるっちゃ!」
 あたるの言葉も聞かず、ラムは弁当箱の蓋を開けた。
 ラムの弁当箱の中に入っていたのは、何やらとげとげした黄色くて丸い物。しかも、臭いがとてつもなくきつい。
 「ぬ゛あ゛ぁっ!?」
 犬夜叉はラムが弁当箱を開けたとたん、飛ぶように逃げていってしまった。
 「あの人……どうしたのけ?」
 それをラムはきょとんと見る。
 「い、犬夜叉は強い臭いには弱いのよ……」
 (私でさえきつく感じるのに……)
 「っ゛……」
 (あのおなご、臭いがわからんのじゃろうか?)
 七宝も必死で鼻をつまんでいる。
 「に……臭いはとにかく味はおいしいっちゃ!食べてみるっちゃ!!」
 「ほ、本当に?」
 「いーや、ラムの手料理はちっともうまくない!」
 「ダーリンは静かにしてるっちゃ。」
 「では、まず私が食べてみますか。」
 「み、弥勒様……」
 「食べてみるっちゃ。」
 弥勒は鼻をつまみながらその丸い物を食べたが、そのとたんすぐに
 「か……かごめ様、水はありませんか?」
 と、何かを我慢しているような声で言った。
 「あ……これ?」
 かごめが水筒を出すと、弥勒はすぐにそれを手に取り、がぶがぶ飲んだ。
 (だーからうまくないと言ったのに……)
 あたるはその様子を何か言いたそうに見ていた。
 「……法師様、大丈夫?」
 「……ええ。少し辛かったので……」
 弥勒はかなり無理な作り笑いでそう答えた。
 (果たしてそれは本当に少しなんだろうか?)
 その時、
 「かっかごめ……」
 少し遠くから、犬夜叉とはとても思えないような、弱々しい声が聞こえてきた。
 「なーに、犬夜叉。」
 「その女の弁当早く閉めろ……こんなに離れていても鼻が痛くてたまらねぇ……」
 「わ、わかったわ。ラムさん、すみませんけどあの人はとっても臭いに敏感なので……」
 「あの人、そんなにこの臭いが嫌なのけ?」
 そう言ってラムは自分の手料理を一つ口に入れる。
 「とってもこれおいしいのに……」
 「そう思っているのはてめぇだけだ!」
 遠くから犬夜叉は叫ぶが、その声は少しかすれていて、かなり苦しそうなことが分かる。
 「犬夜叉、大丈夫か?」
 「ちっとも大丈夫じゃねえ……」
 「ほら、さっきあんたが食べたいって言っていたカップラーメン、早くしないとのびちゃうわよ。」
 「……ここに持ってこい。俺はここからあっちに行きたくねえっ。」
 「しかたないわねぇ……」
 かごめはカップラーメンを持って犬夜叉の近くへ行く。
 「ここに置くから、ちゃんと自分で食べてね。」
 「はーいっ。」
 いきなり隣で明るい声が聞こえた。答えたのは犬夜叉ではなく、あたる。
 「そうやってすぐにかごめちゃんの所へ行くんじゃないっちゃー!!」
 こうしてほのぼのとした(?)ランチタイムはすぎていった……。




 「なんか、デートの邪魔しちゃってごめんね。」
 「こっちこそ、ダーリンが迷惑かけてすまなかったっちゃ。」
 その後、ラムとあたるは妖怪に襲われることもなく、楽しいデートを過ごしたという……。

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この後うる星が再登場するのはかなり後になりそうです(汗
そして、会話中に出てくる2002年。はい、これは2002年に書いてたんですよね〜(だから何
今回は思いきりギャグ全開でしたが、次回はもう少しシリアスになる予定。しかもその理由がこの話の中に入ってたり……

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