す〜ぱ〜るーみっく  〜過去と未来の主人公、そして新たな……?〜




 「まぁ、二人とも落ち着いて。」
 その二人の間に弥勒が入った。

 「こんな状態で落ち着いていられっか!」
 こう答えたのは乱馬。
 「……とりあえず落ち着くけどよー…」
 こちらは犬夜叉である。

 「あれ……?」
 (なんだか乱馬、いつもよりも乱暴な言い方しているような気が……)
 「ん……?」
 (いつもの犬夜叉よりは少しだけ性格違うような……)
 「とりあえず、お二人とも名前を言ってくれませんか?」

 「あー?……犬夜叉でいっ。」
 「……乱馬。」

 「え………!?」
 犬夜叉と答えた方の姿は乱馬で、乱馬と答えた方の姿は犬夜叉だったのだ。
 「入れ替わってる…!?」

 「……だからさっさと戻れっつってんだバカヤロー!」
 「戻ることができればもう戻ってるって!」
 また二人が口ゲンカを始めようとしたとき、
  <キュイン……>
 「…!?」
 (また周りの景色が歪んだような……)
 また景色が一瞬歪むが、すぐ戻る。まるでその一瞬だけ、時が止まったかのように。
 「あ……!?」
 「戻った……」
 犬夜叉と乱馬は、自分の体を確認するような感じで触っている。

 「まさかとは思っていましたが……本当らしいですね。」
 「弥勒様……何か知っているんですか?」
 「本当って何のこと?」
 「今この二人に起こったのは、“魂結合”(たまけつごう)――――といいます。」
 「……で?」
 「あ、やはりそれだけだとわかりませんか。」
 「…普通わからんじゃろう。」
 「説明すると長くなるんですけどねぇ……」
 「とにかく…説明を話して下さい。」
 「はい……」
 弥勒は一旦、深呼吸をしてから話し始めた。
 「魂結合とは、同じ魂を持つ物同士が近づいたとき、自我とは無意識にお互いの魂が自分のだと反応し、引き合って一つになることです。そして、大抵は魂の強い方が弱い方を取り込んでしまうのですが、まれにほぼ同じ強さの魂だった場合、引き合う力もほぼ同じになるので、一瞬魂、すなわち心が入れ替わったようになり、今度はまた互いに戻ろうとして、魂は元の体に戻ります。この場合だけを“魂交差”(たまこうさ)といい、その後はお互いの魂が自分と支配する体の違うことに気づき、入れ替わることはありません。しかし、一旦その二人が離れ、また近づくと既に互いの魂はそのことを忘れているため、また一瞬入れ替わる―――ということです。」
 弥勒以外は誰もただぽかーんとした感じで話を聞いている。
 「普通、同じ時の中で同じ魂が二つあることはまずありえません。魂で結ばれている、魂が同じ者は前世と後世、この関係のみです。そのため、ふつうこの現象が起きる時はどちらかが時を超えてその世界に来たことになり、そして互いの魂が入れ替わる時―――その時に時間のひずみが生じ、その一瞬だけ周りの景色が歪んだように見えるのです。ですから……」
 「み、弥勒様、ちょっと待って。」
 頭に手を押さえてかごめが言った。
 「かごめ様、どうしたのですか?」
 「悪いんだけど……今の話全然意味が……」
 「オラもそうじゃ。」
 七宝は四魂の話を聞いた直後のような顔をしている。
 「あかね、これって一体……」
 「私に言われても……」
 「法師さま、私もあまりわからなかったけど、『同じ魂』って言っていたよねぇ……」
 「はい。」
 「それってもしかして……」
 「そういうことになります。」
 「『なります』って、何がなんだかちっともわからねぇよっ!」
 「はぁ……簡単に言いますと、二人が同じ魂で、その魂が同じ強さを持っていたために、一瞬心が入れ替わったということです。」
 「え、それって……」
 「……言いはしませんが、魂が同じということは、恐らく二人の関係も……」
 (それって……乱馬くんが犬夜叉の生まれ変わりっていうこと!?)
 (声はそっくりだけど……なんだか……)
 「おい、だとすると、俺が……」
 「あせるな、犬夜叉。妖怪も人間も肉体は違うが魂は同じもの。ですから、妖怪の後世が人間、また反対に人間の後世が妖怪であることもありうるのです。」

 「っ……でも……」
 犬夜叉と乱馬はお互いの顔を見合わせる。
 「……でも俺とこの変態全っ然顔似てねーぞっ。」
 「似てる似てないはとにかく、俺は変態じゃねえっ!」
 「変態だっ。でもってやっぱ全然似てねぇっ!」
 「だから俺は変態なんかじゃねえっつーの!」

 「あぁ、結局いつものケンカになってしもうた。」
 「結構顔は似ていると思うんですけどねぇ。」
 「うん、乱馬くんの顔……人間の時の犬夜叉にそっくりだもん。」
 「でも、なんでこんなに二人とも仲が悪いんだか……」

 「とにかく、俺とてめーは同じじゃねぇからな。」
 「……ああ、俺は半バケと違ってそんなに乱暴じゃねえからなぁ。」
  <むかっ>
 「けっ、俺だって変態ほどやわじゃねーよ。」
  <ぴくっ>
 「おい、誰がやわなんだよ誰が。」
 「おめーのことに決まってんじゃねーか、この前死にかけてたくせに。」
 「お、俺はやわなんかじゃねえっ、あんときゃなー、ちと油断しただけでいっ!」
 「おー、へらず口だけは上等じゃねえか。」
 「だからやわじゃねっつーの!」
 「へっ、それは単にてめえがわかっていねぇだけじゃねえのか!?」
  <ビュッ>
 「たわっ!?」
 犬夜叉は乱馬を殴ろうとしたが、乱馬は紙一重で身をかわす。
 「てめぇ……俺とやんのかよっ!」
 「あぁ、やったろーじゃねーかっ!」
  <ばき どか どす……>

 「あああ、本当のケンカになってしまったぞ。」
 七宝は二人を見ておろおろしている。
 「いや……あれは、互いにどのくらいの強さか試してると思うよ。」
 「うん、どう見ても……二人とも手加減してるもの。」

 (こいつっ……意外と素早い。力もあるな。)
 (んにゃろー、くるくる変な動きしやがってっ!)

 「あの身のこなし……乱馬という方は武道家でしょうか?」
 「うん。無差別格闘早乙女流二代目。」
 「二代目……じゃあまだこの時代にはない流派?」
 「……そういうことになるわね。」

  <みし……>
 「はぁ、はぁ……おめー、結構やるじゃねーか。」
 「ああ、やるよ……でもなぁ………」
 「ん?」
 「わざわざ俺の頭の上にいながら言うんじゃねえっ!」
 乱馬は犬夜叉の頭の上に、しかも丁度両耳を踏んでいたのだ。犬夜叉は乱馬を殴りつけようとしたが、
 「とっ。」
 とっさに乱馬は犬夜叉の上から降りる。
  <どがっ>
 「て…………」
 犬夜叉は拳を自分の頭にぶつけてしまった。
 「痛くねーか?」
 「…ったく、耳触られたり頭踏まれたりすることはあるが、狙い澄まされたように耳を踏まれたのは初めてでいっ!」
 犬夜叉は腰から鉄砕牙を抜いた。本気で怒っているらしい。
 「へ………!?」

 「…なぁ、かごめ、あかね。」
 「「なに?」」

 「てめぇ、殺すっ!」
 「お、おい、ちと待てっ!」
 犬夜叉は何度も鉄砕牙で乱馬に斬りかかっている。それを必死で避ける乱馬。

 「い、いつの間にか鉄砕牙抜いてる……あかねちゃん、止めよう。」
 「うん、私も止める。」
 「おすわりっ!」
  <ぐしゃ>
 「んぎっ。」
 「あんたもそうムキにならないのっ。」
  <どす>
 「…………」
 犬夜叉はかごめに、同時に乱馬はあかねに止められた。
 「あかねちゃん、そのおっきな木槌、一体どこから……」
 「あ、これ?別に気にしない気にしない。」
 「そ、そう?」
 (すっごく気になるんだけど……)




 「だから、あんた前に桔梗は桔梗で、かごめはかごめだって言ったじゃない。それと同じように、乱馬くんは乱馬くんで、犬夜叉は犬夜叉なの。」
 「うるせい。んなこたわかっとる。」
 犬夜叉はさっきからかごめに顔も会わせない。しかし、その顔には複雑な表情を浮かべていた。
 「犬夜叉の気持ちもわかるんじゃがのう。」
 「そういえば、法師さま。」
 「珊瑚、何でしょうか?」
 「かごめちゃんは桔梗の生まれ変わりなのに、なんであの二人にはあれが起こらないの?」
 「……桔梗様は死人です。」
 「…………」
 「あの現象は……」
 「生きている人同士でしか起こらねぇってことかい。」
 割りこむ犬夜叉。顔は何にもない方向を向いたまま。
 「そうです。また、生まれ変わる前の自分、つまり、小さい頃の自分とかと出会ってもそれは起こりません。」
 「…よくわからないけど、複雑だね……」
 「ところで珊瑚。」
 「何?」
 「もしかするとあちらの世界には、私と珊瑚の子孫がいるのかもしれませんね。」
 「え゛……!?」
 弥勒の言葉に思わず赤面する珊瑚。
 「そ、それって、一体どういう意゛っ………ー!!」
 しかし、それはさっきまでのまじめな弥勒ではなかった。
 弥勒の手はいつもの如く、あの場所に……。
 「こっこの……スケベ法師――っ!!」
  <ぱ―――…ん>
 周りにとても爽快な音が響いたのだった。




 (あの魔犬慟哭破の固まりみたいな奴が俺の前世ぇ……?)
 「ねえ、乱馬。」
 「なんだぁ?」
 「ちょっと、あの犬夜叉っていう人が乱馬の前世だっていう話、私はなんだか信じられないけど……乱馬はどう思う?」
 「俺も同じだよ。」
 乱馬は少し不満そうに言う。
 「乱馬って動物に例えると犬というより猫なのにね。」
 「……そういう問題か?」
 「え、違うの?」
 「…………」
 (ったく、相変わらずニブイ奴だぜ。)








 時は現代―――。
 「ダァリーン!明日うちと一緒にデートするっちゃ!」
 「な、なんだよいきなり。」
 場所はあたるの家の中。はしゃぐラムと不機嫌そうなあたる。
 「最近デート行ってなかったっちゃ。だから明日したいっちゃ。」
 「……でどこ行くんだ?」
 「てきとーだっちゃ!」
 「…………はぁ?」
 「この簡易タイムマシンを適当な時と場所に合わせて、そこでデートするっちゃ。」
 「……やめる。」
 あたるはきっぱりと言った。
 「おまえがそーゆーことをしてとんでもない目にしか遭ったことがない。」
 「……そうだっちゃか。」
 「ふん。」
 「せっかく女の子がいっぱいいそうな時代にしようと思ったのになぁ……残念だっちゃ!」
 (…………!)
 それを聞いたあたるは、つかつかとラムの方に歩いてきた。
 「……わかった。明日おまえと一緒にデートしてやる。」
 「うれしいっちゃ!ただし、うち以外の女の子に少しでも触ったら、100万ボルトだっちゃよ。」
 あたるはハッとした。
 「い……今の発言撤回〜!」
 「だめだっちゃ〜!」
 (騙された……)
 (ダーリンって本当に単純だっちゃ!)

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弥勒の説明の所、一部シャーマンキングの影響を受けたような所が……(何
それから、やっとうる星も登場しました。どんどん長くなりそうです。

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