す〜ぱ〜るーみっく  〜清く正しい勉強会〜




 「かごめちゃん、遅いわねぇ……もうすぐ時間なのに。」
 ひな子先生の住んでいるなかよしマンションの前で、乱馬とあかねは待っていた。
 「ごめん、遅くなって……」
 「おう、やっと来たか……え!?」
 やっとかごめが来たかと思った瞬間、あの感覚が。
  <キュインッ>
 かごめと一緒に犬夜叉も来ていたのだ。
 「ちょ、何でお前まで来てんだよ!?」
 「別に来ても悪くねーだろ、こんくらいで。」
 「あかねちゃん、ごめん……どうしても言うこと聞いてくれなくて。」
 「べ、別にいいわよ。」
  <キュッ……>
 「……んで、その女はどこにいるんだ?」
 「あー、あの部屋だ……っておい!」
 乱馬が部屋を指さすと、あっという間に犬夜叉は窓へ飛んでいってしまった。
 「……まぁ、いいか。」
 「いいの!?」
 「ああ、あいつにはひな子先生の怖さを知ってもらわねーとな。」
 ガラスを突き破って入る犬夜叉。中で何か会話をしているようだが、ここからは聞こえない。
 と、急に部屋の中が光った。その光が治まったと思いきや、今度は窓から謎の光球が飛び出る。
  <ドォォォン>
 犬夜叉は、その光球に飛ばされていた。
 「犬夜叉!?」
 落ちて来るなり、犬夜叉へ駆け寄るかごめ。
 「…変態……あのアマぁ一体何者だ……?」
 息も絶え絶えに言う犬夜叉は、起きることすらままならないようだった。
 (こりゃー、あらかた闘気吸い尽くされたな……)
 「そーゆーわけで、ひなちゃんとこには俺ら三人で行くからな。」
 「お、おい、てめー待ちやが……」
  <ぴと>
 かごめは札を犬夜叉の額に貼った。
 「おとなしく待ってるの。」
 「だ、誰が待つかっ!……こんな札……!!」
 犬夜叉は札をはがそうとするが、やはり体は全く動かない。
 「んー、貼るのはこの辺の方がいいんじゃねーか?」
 乱馬は一旦札をはがすと、今度は犬夜叉の口を丁度封じるように貼る。
 「!!……もがふががが……」
 「じゃ、行きましょ。」
 どう見ても怪しい犬耳を置いて、三人はなかよしマンションへ向かったのだった。



  <ピンポーン>
 先生の部屋の前に着き、あかねがインターホンを押した。しかし、ドアは開かない。
 三回ほど押しても開かない。
 「……先生ー、いますかー?」
 あかねが呼んで数秒後、ゆっくりとドアが開いてやっとひな子先生が出てきた。
 「あ、天道さんたちだったの?……ごめんなさい、開けなくて。」
 ひな子先生はバスローブ姿だった。犬夜叉が来たときは風呂上がりだったのだろう。
 「さっき狼男が入ってきて、とても怖かったのよ。それも早乙女君によく似た声の。……まさかさっきの、早乙女君の変装じゃあ……」
 「いやいやいやいや、それは違うから大丈夫ですって!それよりも、勉強会……」
 「ええ、わかってるわ。さぁ、中に入って。着替えてくるから、ちょっと部屋で待っててね。」


 部屋は相変わらず汚くて、そのままでは勉強会はできそうになかった。
 「ひな子先生、部屋はあの時と全く変わんねーな。」
 「とりあえず、片づけましょう。」
 せっせと部屋の片づけをする三人。片づけが終わってテーブルにそれまで床においていた勉強道具を乗せた頃、普段着に着替えたひな子先生がやってきた。
 「その子は?」
 「ひ、日暮かごめです。あかねちゃんの友達です。中三なのでよくわからないと思いますが、よろしくお願いします。」
 「まぁ、良い子ね。それじゃあ始めましょう。」
 テーブルを四人で囲み、勉強会が始まった。早速教科書の英文を読んでいくひな子先生。その胸には、あのブローチが輝いていた。
 (肌身離さずしっかりとブローチを……あれさえ取れば……!)
 ひな子先生の胸へ手を伸ばそうとする乱馬だが、あかねにつねられる。
 「あいてっ!……何しやがる。」
 「あんたねえ、それじゃただのセクハラよ。犬夜叉と同じ目に遭いたいの?」
 「……しゃーねーな。」
 ひな子先生は気づいていないようで、そのまま読み進んでいった。
 「……と、これで65ページの内容は終わりね。質問するわよ早乙女君。」
 「へ?」
 「When will the package arrive?」
 「え……えと……」
 「あーもう、じゃあ次、日暮さん。」
 「……By……next Monday.」
 「正解。全く、中学生に負けてどうするのよ?」
 「す、すいません。」
 「じゃ、次の問題。」
 「な!?」
 その後も、ひな子先生の乱馬への質問は続く。全く話を聞いてなかった乱馬が答えられるはずもない。そのかわり、あかねやかごめへの質問は全く来なかった。

 「やっぱりテキパキしてるし、普通の先生なんだけど。」
 ひそひそとかごめはあかねに言う。
 「……ううん、変だわ。ひな子先生がここまでまともに授業できているなんて。」

 「しょうがない子ね。教科書65ページ、全部読んでみなさい。」
 「は、はい……」
 そう言いながらも、乱馬はどこからか手のひらサイズのボールを出し、先生の前で二、三回投げ上げてみる。
 「何やってんの、今は勉強中よ。もっとピシッとしなさい、はい65ページ!」
 しかし、先生は無反応。ボールを横に無理矢理置かせる。

 「普段のひな子先生は子供みたいな性格で、コマとかボールとかあるとすぐに遊んじゃうような人なのよ。大人びているときもあるけど、そんなに長くは持たないわ。」
 「そうなんだ……」
 「……そういえば、四魂の玉は持ち主の妖力を高めるっていうけど、他の効力はあるの?」
 「他……持ち主の願いを叶えるっていうわ。どんな願いだとしても。」
 「なるほどね……」

 「そこの発音、違うわよ!最初の方にアクセントがつくの。」
 「……はい。」
 (く……別の意味でブローチを取る機会がねぇ……!)

 「先生はさっき言ったように子供みたいな性格なんだけど根は真面目で、ちゃんと授業をしたいと思っているの。特に乱馬は良く早弁したりエスケープしているからなおさら。」
 「……ということは、先生の願いは今の勉強会……?」
 「だと思うわ。だから、今は真面目に勉強しましょ。乱馬のためにもなるしね。」
 「かけらの話は、勉強会が終わってからってこと?」
 「そう。今の真面目な先生なら、わかってくれるわ。」
 この時、三人はすっかり一人の存在を忘れていた……。



 (寒い……)
 犬夜叉のことに。体はすっかり元気を取り戻したが、お札のせいではいつくばったまま立ち上がることすら出来ない。
 (遅い……あいつら何やってやがるんだ……!)
 かごめ達の所へ行きたい一心で、何とか体を動かそうとする。
 「……………。」
 わずかながら、動く。しかし、それと同時に激しい痺れが犬夜叉を襲う。札を特定の場所に貼らなかったため、効果が半減しているらしい。
 (……いつまでもこんなところで……)
 犬夜叉は根性で腕を口元へ伸ばし、
 (寝てられっかぁぁ!!)
 札を引きはがした。



 黙々と勉強会を続ける三人と先生。
 「……そういえば、この勉強会いつ終わるの?」
 「……聞いてなかったわね……」
 「こらこら、そこの二人も私語はやめなさい。」
 「あ、はい。」
 (まさか、このまま徹夜……!?)
 あかねがそう思ったとき、
 「てめーら何やってんだあぁぁ!!」
 再び犬夜叉が窓から……と言っても一回目の時に既に窓ガラスは粉々になっているが……とにかく入ってきた。
 「い、犬夜叉!?なんであんた……」
 「そんなこたどうでもいい!それよりそこの女、とっととそのかけらを渡しやがれ!!」
 「あ、あなたはさっきの狼男!授業中に乱暴なんて、なんて悪い子なのっ。観念しなさい!!」
 早速五円玉を出すひな子先生。
 「観念するのはてめーの方だ!!」
 すかさず犬夜叉は石ころを投げ、五円玉をはじき飛ばす。と同時に猛ダッシュで向かう。
 「さっきのようにはいかねぇぜ!!」
 犬夜叉の手がひな子先生の胸へ触れると同時に、かごめが叫んだ。
 「おすわり!!」
  <ぐしゃ>
 「ぎゃん!?……かごめ、てめー……」
 「だから、私たちは戦いに来たんじゃなくて話し合いに来たの!そこんとこわかってんの!?」
 「日暮さん!?これは一体……」
 「気にしなくていいぞ、ひなちゃん先生。今はこの狼男を撃退する方が先だ。」
 乱馬は五円玉を拾い、ひな子先生に持たせる。
 「ありがとう、早乙女君。……八宝五円殺!!」
 「な゛……てめぇら……」
 「……つり銭返し!!」
  <ドォォォン>
 再び吹っ飛ばされた犬夜叉。
 「全く、しぶとい狼男ね。」
  <ふしゅる〜……>
 しかし、それと同時に先生の姿は子供になっていた。
 「せ、先生!?」
 胸元を見ると、ブローチが無くなっている。犬夜叉がブローチを掴み、そのまま飛んでいってしまったのだろう。
 (これが……先生の本来の姿……!?)
 「た、大変だわ!早く三人ともあの狼男を追いかけて!!」
 「お……おう。」



 マンションを出た四人だが、なかなか見つからない。数分経って、乱馬が思いついたようにさっきのボールを出した。
 「あ、そうだ、先生ー。」
 「なに?」
 「ほいっ。」
 そして、投げる。
 「わーい、ボールだボールだー。」
 ひな子先生はボールをキャッチすると、幼児のようにはしゃぎながらぽんぽんと跳ねさせて遊んでいた。
 「……じゃ、二人ともずらかるか。」
 「え、いいの?」
 「いいんだよ、予想外の展開だったけど、一応かけらは手に入ったんだしな。あと、かごめ。あれが、ひなちゃん先生の普段の姿だ。違うだろ?」
 「……うん。」
 (なんか、それはそれで疑問がたくさん増えちゃったけど……いい、のかな……?)
 その後、最初よりもさらに倍近く遠いところで、三人は目を回しながらもかけらだけはしっかりと握っている犬夜叉を発見したのだった……。





 翌日。
 「ね、今回は私の言うとおりだったでしょ。」
 「うるせぇ!!」
 「そんな人がいたのですか。一度会ってみたいものですなぁ。」
 「法師さま、会ってどうする気なの?」
 「いやぁ、それはその……」



 「天道さんに早乙女君、来たわね。じゃあ、あの狼男を探しましょ!」
 「へいへい……」
 乱馬とあかねは、約一週間『狼男』を探し回ることになったのだった……。

執筆最終更新日:2007年9月12日
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最初は勉強会らしくしようとして長々と英文を書いていたりしたのですが、もし間違ってると非常に恥ずかしいので止めておきました(何
次回はまるでどっかの打ち切りマンガの如くあらすじばかりを添えて、さらにその次に最終回の予定。詳しくは2007年9月12日の日記を参照。

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