す〜ぱ〜るーみっく  〜楓の村にて〜




 「うわぁ……大きな木。」
 乱馬とあかね、良牙、そして司は森の中をがさがさ進んでいた。そのうちに、とても大きくてりっぱな太い木が立っているのを見つけたのだった。
 「なんかこの木だけ周りより目立ってるぜ。」
 「ん、なんだこれは?」
 その少し奥で、乱馬が古井戸を見つけた。のぞき込むと水はなく、底が見えている。
 「って、ただの枯れ井戸じゃねーか。」
 「でもなんか、不思議な感じがするんだよな。」
 その時、
  <ヒュン カカッ>
 「!?」
 乱馬達を目がけて数本の矢が飛んできた。なんとか避けて、矢は近くの木々や井戸などに突き刺さる。
 飛んできた方を見ると、数人の弓矢を持った人々がこちらを向いて睨んでいた。
 「誰だ!この辺の者ではないな。」
 「おまえら、妖怪か!?」




 「て、てめーら何すんだよー!」
 「おい司、少しはだまってろよ……。」
 今まで乱馬達が立ち寄った村でも、変な目で見られたり、何かひそひそ話をされたりした。が……いきなり縄でぐるぐる巻きにされたのは初めてである。
 もちろん、抜けようとすれば簡単に抜けられるのだが、それだと誤解が深くなるに違いない。
 「ったく、俺ならこの縄ぶっちぎってとっとと逃げてくのに……」
 「司くん、そんなことしたら余計怪しまれるだけよ。」
 仕方なく、四人は座ったままだった。


 「楓様だ!」
 「巫女の楓様が来たぞー。」
 そのうち、四人の前へ巫女姿の、何やらかなり年取ったおばあさんが来た。
 「楓様、見慣れぬ着物を着た奴らが骨食いの井戸にいたんです。」
 「犬夜叉たちでもないんですよ。でも普通の人間はあんな所へ行かないし……。」
 (犬夜叉?こんなところにあいつが来たりするのか?)
 少し乱馬は気になったが、黙って村人と楓とか言う巫女の話を聞く。
 「そういうわけか……ふむ、どれどれ……」
 楓という人は、乱馬達の顔をうかがう。
 「……妖気は感じぬ。おぬし達は人間じゃな。」
 「当たり前だってば!」
 これに司は大声で即答。
 「だからおまえ、何度おとなしくしろって言ったらいいんだよ……」
 「ん?」
 楓は乱馬の所へ近づいて、更にじっと見る。
 「……似ている。おぬし、犬夜叉に似ておる。」
 「な゛……ちょ、ちょっと待てよばーさん。なんで俺があの半バケと似てなくちゃいけねーんだよ!?」
 さすがに乱馬も抑えられなくなり、つい言ってしまった。
 「おぬし、犬夜叉を知っておるのか!?」
 「あ……。」
 そこへ丁度……噂をすれば、影が来る。

 「待ちやがれ、かごめー!」
 「待たないわよ、ここ一ヶ月全然学校行ってなかったんだから!」
 影より先に、声だけが聞こえている。

 「そうかおぬしたち、犬夜叉の知り合いか。」
 楓は乱馬達の縄を解きながら言う。
 「知り合いというか、なんというか……。」
 「なぁ、犬夜叉って誰なんだ?」
 「声は聞こえてるから……多分そのうち来るぜ。」

 (ん……この臭い……まさか!?)
 「ってかごめ、本っ当に待ちやがれっ!」
 「だからなんなのよ!?」
 「いつもながらすごいケンカじゃ。」
 「私はもう見慣れてしまいましたけどねぇ。」
 「いいかげんに行かないと、内容がさっぱりわから……」
 (え……!?)
 一つ道を曲がったとたん、目の前に乱馬達の姿が見えた。後を追ってきた犬夜叉たちにも。そして……
  <キュイン>
 ……いきなり魂交差。
 「な……なんでてめぇがこんな所にいるんだよ!?」
 「よくわからねぇけどきちまったんだよ!」
 (……今のは魂交差。間違いない、あやつは……)

 「あいつが犬夜叉っていうのか?確かに犬の耳をしてるな。」
 「んにしても、乱馬の奴様子が変だな。それに、さっき変な感じが……」
 「あ……あの時良牙君いなかったっけ。なんだか、乱馬って犬夜叉の生まれ変わりらしいのよ。だから会うたびに少しだけ中身が入れ替わっちゃうって事らしいけど……私もよくわからないのよ……」
 「……俺には本当に何がなんだかさっぱりわからねぇんだが……」
 「司くんはわからなくても無理ないかも……」

  <キュウッ>
 「や、やっと戻った……」
 「ったく、なんでてめーと会うたびにこんな事しなくちゃいけねぇんだよ……」
 「それはこっちのセリフだ。」
 「やはり、おぬし……立ち話も難じゃ、わしの家に来るがよい。」



 「……というわけです。」
 「なるほど、おぬしは犬夜叉の生まれ変わりなのか。」
 「……一応な。」
 「俺は信じてねぇ!」
 「あれ、その男の子は誰なの?」
 「つ……司だ。」
 「あ、この子とはいろいろあって一緒にいる事になったの。」
 「それからあかねちゃん、南蛮ミラーの事なんだけど……赤い手鏡っていうからとりあえずそういうのを集めてみたわ。この中にそれってある?」
 かごめはリュックの中から5、6枚ほど手鏡を取り出す。それはどれも赤くて少しひびの入った手鏡だったが、どれも南蛮ミラーとは少しずつ違っていた。
 「ごめん……ないみたい。」
 「ったく、その鏡の臭いさえわかれば楽なんだけどな。」
 「鏡……?」
 司も気になるのか、鏡の方に顔を突っこむ。
 「あ、ごめんね、司くんにとって訳のわからない話ばかりで。」
 「あぁ……」
 少し司は複雑な顔をした。
 (鏡とこいつらと、何か関係あるのか?)
 そんな中、いきなりかごめが手をぽむと打って言った。
 「そうだ!骨喰いの井戸に行ってみない?」
 「骨喰いの井戸?」
 「うん。そこから私はここと現代を行き来しているの。もしかしたらそこから戻られるかも……」
 「本当!?」
 「……げんだいってなんなんだ?」
 司はまたきょとんとして言う。
 「まぁ私達にもいろいろあるのよ。」
 「ふぅん……」



 そうして犬夜叉一行と乱馬達が着いたのは、さっきの枯れ井戸だった。
 「あれ、ここ……」
 「あかねちゃん、知ってるの?」
 「あ、えと、私達が村人につかまっちゃった所がここなの。」
 「そ、そうなんだ……」
 「とりあえずおまえら、この中に飛び込んでみな。」
 井戸の底を指差して犬夜叉が言う。
 「って……井戸の底へか?」
 「当たり前だろ。」
 「そーか……じゃあやってみるぜっ。」
 そういって乱馬は、井戸の底へと飛び降りた。スタッという着地の音が中に響く。
 「で、次どうするんだ?」
 「次って……な゛!?お、おい、てめーらも飛び込んでみろ!」
 「え?あぁ……」
 そして良牙、あかねも井戸の中へ飛び降りる。二人も乱馬と一緒に普通に底に着地した。
 そう……つまり、戦国時代のままの井戸に。
 「……まさか通じてないわけじゃねえよな!?」
 犬夜叉もばっと井戸の底へ飛び込む。真下には乱馬が。
 「って、おい!」
 乱馬があわてて避けようとした瞬間、地に着く直前で犬夜叉の姿はふっと消えた。
 「な゛……!?」
 「……どうやら乱馬たちは通れないらしいのう。」
 「ということは、やっぱりあの鏡を探すしかありませんね。」

 (そーか、あいつらがここを通れねぇだけなのか……)
 そう思いつつ、犬夜叉は現代の骨喰いの井戸をよじ登る。
 登りきった途端、丁度目の前に草太が姿を現した。
 「あれ、犬のにーちゃんどうしたの?ねーちゃんはまだ戻ってきてないけど……」
 「んぁ、なんでもねぇっ。」
 そのまますぐに、犬夜叉は再び井戸の底へと飛び込んだ。

 「あ、乱馬君達早く井戸出て。でないと、犬夜叉が戻ってきた時はそれこそ……」
  <ぐしゃっ>
 いきなり犬夜叉が現れ、乱馬だけがその下敷きに……。
 「つぶれちゃうからって……遅かったわね。」




 その夜。乱馬達は楓の家に泊まらせてもらうことになった。
 「あー、こんなにまともな飯、久しぶりに食ったぜ。」
 「それはわかったから、司……もう少し礼儀正しくなれよ。」
 「あ、そうだ!」
 司は良牙の言葉も聞かずに、犬夜叉に問いかける。
 「おまえ、食べると年が変わっちまうキノコって知ってるか!?」
 「ああ?てかおまえ、七宝以上にませてやがるな。」
 「そんなことどーでもいい!それよりも……」
 「それって、年の数茸のこと?」
 割って入ったのは珊瑚。
 「え……珊瑚ちゃん知ってるの?」
 「ああ、食べる時のキノコの長さで歳が変わるキノコだろ?妖怪退治屋の間ではよく使っていたからね。」
 「妖怪退治屋?」
 「あ、乱馬くん達は知らないのか。その名の通り、妖怪退治を生業とする職業だよ。」
 「そんなのがあるのか。俺らの世界では、俺たち武道家が妖怪退治の務めなんだけどな。」
 「……そうなんだ……」
 そう言って珊瑚は、何やら複雑な顔をする。
 「ど、どうしたの、珊瑚ちゃん?」
 (500年後にあたしの里は……存在すらしないんだ……)
 珊瑚はそんな事を考えていた。が、それは今の話とは全く関係ない。
 ……ごまかした方がいい。
 「あ、なんでもないよ、うん、別に何にも。で、それは強い妖怪と戦う時に使って、おびき寄せる餌の中に小さい物を入れるんだ。強いのでも子供になっちゃえばたいしたことないからね。ただ、うっかりして人間も食べると同じ事になっちゃうから注意が必要なんだけど……あんた、まさか……」
 「……ああ、食っちまったぜ。」
 司は少し不満げに答える。
 「まぁそれで、偶然俺たちと会って一緒になったんだけど……そのキノコの生えてる場所、知ってるのか?」
 「うん。ここから西に見える山の中腹によく生えてるよ。でも、あそこは結構妖怪もいるし…あたしたちも一緒に行こうか?」
 「いや、別にいいぜ。そんなの俺たちだけでもなんとかなるしな。」
 「……じゃあ、せめて出発するのは明日にしてね。」
 「珊瑚ちゃん、そんなこと言われなくても……あ。」
 あかねがそう言おうとした時、珊瑚の言った意味がわかった。
 振り向くと、すぐに司が外に出ようとしていたのだ。
 「おまえなぁ、早く行きたいのはわかるが……!」
 「こんな夜に出たって仕方ねぇだろ!」
 乱馬と良牙はあわてて司を押さえ込んだのだった。




 ………で、翌日。
 「じゃあ、私現代に行って来るわね。」
 「今回はどのくらいいるんだよ?」
 「う〜ん……三日くらいかな。ちゃんと帰ってくるからあんたは来なくていいわよ。それから、乱馬君達も早く現代に戻ってね!」
 かごめはそう言って骨喰いの井戸の方へ走っていった。
 「俺たちも行くとするか。」
 「本当にいいのですか?私達も行かなくて。かごめ様がおられぬ以上、我々も遠くまで動けません。でもあのくらいなら……」
 「本当はあかねとついていきたいだけじゃろ?」
 「……違いますって。」
 「よーし、んじゃ行くぜ!」
 「おうっ。」
 そう言って、司と良牙は真っ先に走り出す。
 ……反対の方向に。
 「って、最初っから間違えるんじゃね―――っ!!」
 (さすが、方向音痴の家系だぜ……。)

次へ進む   前へ戻る
実はストーリーだけはかなり前から私の頭の中で既に完結しているんです、この長編。しかし、自分の文章力というか、表現力というかが想像力に全然追いついていないと言うのが現状で……つまり、どう書いたらいいかわからない(ぉぃ)と。
次の話で、やっと……になる予定です。ただし、完結ではありません(何

るーみっくへ
トップページへ