良牙、あの森に迷い込む!?(中)




 取材班の人たちは森の中を進みながらいろいろなことを言っていた。まずは、髪がとても短い人から。
 『我々は今、この青木ヶ原を横断中です。昔ここに挑戦した先輩たちは、この中心部に村があったと言います。その証拠はどこにもありませんが、我々がその証拠をも掴んで見せようと思います。』
 隣のメガネをかけた人が言う。
 『ご覧の通り、迷わないように命綱をはりながら進んでおります。昔先輩たちが挑戦した時はこの命綱が切られて大変になりましたが、今回はそのようなことをなくすために、その時の倍の太さになっております。』
 そして、さらにその隣の背の低い人が言う。
 『えー、なぜ我々の先輩が命綱を切られながらもこの森から帰って来ることができたのかは、次の映像をご覧下さい!』
 そこで映像は昔のに切り替えられた。
 その映像には、今より更に茂った青木ヶ原を進んで行くのと、迷子になっていたある二人を原住民と間違えたところ、そして命綱を切られて号泣している取材班の姿。そこでカメラマンも落ち込んだのか、スイッチを消してしまって映像は終わっている。
 『この映像にはここまでしか写っておりませんが、この後先輩たちは樹海の中心部にある村へ歓迎されたそうです。そしてコンパを開かれ、ヤケになっていたそうですが、その時に菓子の容器などたくさんゴミが出ました。そのゴミは燃やしてしまったそうですが、それでも灰は残ります。』
 『朝になって先輩たちが我に帰ったとき、迷子になってた二人が喜んでいるのを見たのです。【俺たちは帰れる!】と。』
 『実はこの二人はエスパーで、さっきの男の人の方ですね、その人はなんとゴミからゴミへテレポートする能力を持っていたんだそうです。灰になってもゴミはやっぱりゴミです。また、缶詰などは燃えないゴミなのでそのまま燃え残っていました。なので、我々の先輩たちは青木ヶ原を横断することはできませんでしたが、無事元の所へ帰ることができたそうです。』
 『しかし、そんな奇跡が二度も起こるはずがありません。だからこそ、今回は用心に用心を重ねて進んでいるのです。』

 「へえ……すごい………」
 「ったく、こんなの見ていて何が楽しいんだよ。」



  どか ばきっ……どさっ

 「はぁ、はぁ……」
 (ったく、なんなんだここは……?)
 トラは起きあがってこない。気絶したのだろう。
 「やー、おみごとおみごと!」
 と、後ろで何やら声が聞こえる。振り向くと、かなりぼろぼろの服を着た人が何人か拍手をしている。
 「騒がしいので何があったかと来てみたら……」
 「久しぶりの文明人じゃ!」
 「おまけに虎も退治されておるし。」
 「………?」
 「とにかく、村にご案内。」
 「はあ……」
 良牙は言われるがままについていった。



 「まず、ここは一体どこなんだ?」
 「ここら辺の樹海は青木ヶ原と言いましてのう、とおっても深い原生林なんじゃ。」
 長老らしき人が地図を広げながら言う。その地図は、良牙が書いたのにも負けないほどの下手で適当なものだった。
 「そして、さっきの虎はとても凶暴でな、村民一同難儀しておったんじゃ。」
 「……それで、なんでこんな所に村があるんですか?」
 「この辺りの岩は磁性をおびているから、磁石なんか役にたたん。おまけにこの森。ここに住んでいるのはみんな迷子になった者たちじゃ。」
 「な……ここから帰ることはできないのか?」
 「ここはちょうど樹海の中央部で、ここまでたどりつくのもよほどの体力と根性が必要なのだが……」
 「ましてや、帰るとなったら超人的な体力と根性と忍耐と土地勘が必要ですがな。あんたもあきらめて、ここに永住すればいいで。」
 「ん゛な、冗談じゃねえよ!!」
 良牙は体力は言うまでもないぐらいある。根性と忍耐もそれなりにある。だが、土地勘に対しては……。
 しかし、良牙はそんなことなんか気にもしなかった。とにかく森から出たいことで頭がいっぱいなのだ。
 「俺は絶対にこの森を抜け出すんだよっ!」

  ガサガサガサっ……

 そう言って良牙は森の中へ入っていった。
 しかし、数分後……

  がさっ

 「おやおや、おかえり。」
 「………」
 結局同じ所へ戻ってきてしまった。
 「ちくしょう、もう一度!」
 しかし、何度やってもどういうわけか同じ所へ出てしまう。
 「あんた、いいかげんにあきらめたらどうじゃ?」
 「誰があきらめるもんかっ!」



 『では、ここら辺で一旦CMです!』

 「なんかすっごいかも、これ……」
 「あぁそーですか。」
 あかねは興味津々だが、相変わらず乱馬はテレビと反対の方向を向いていた。

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