良牙、あの森に迷い込む!?(後)




 取材班は相変わらず深い樹海の中をガサガサ進んでいる。
 『百聞は一見にしかずと言いますが……確かにここはすごいところです。最近は環境破壊が問題となっておりますが、ここはゴミ一つ無いきれいな森です。』
 『しかし、人間の住むところには必ずゴミが出ると言うのですが……本当にこの奥に村があるんでしょうかねぇ?』
 『ちょっと高橋さん、我らの先輩が言っていたことですから間違いないでしょう!』
 その時、森の奥で黄色いバンダナと黒いリュックが小さく動いているのが見えた。カメラマンはそれに気づかない。

 「ねぇ、あれ良牙くんじゃない?」
 なびきがテレビの隅へ指を指す。
 「え、こんな所にいるわけ……ないじゃない。」
 その言葉を聞いたのか、乱馬も頭をテレビの方へ向ける。
 「案外そうなんじゃねーのか?」



 (ちくしょう……もうあかねさんやあかりちゃんに会えないのか!?そんなことなどあり得ねぇ!)
 「わっ!?」

  どたっ

 良牙は何かにつまづいて転んだ。
 それは、何やら太いひもだった。
 「なんでこんな所にひもがあるんだよっ!?」
 八つ当たりなのか、良牙はそのひもを思いきり引っ張る。ピンと張っていたひもは、その力で切れてしまった。
 (ったく、磁石が使えないとか言っていたが……この辺まで来れば使えるんじゃねえのか?)
 そう思って磁石を出そうとした……が、ない。どこかで落としたらしい。
 (げっ!………あ、あわてるな響良牙。こういう時は冷静になるんだ、冷静に………そ、そうだ!なんで今まで気づかなかったんだ!?こういう時は……)
 「爆砕点穴!」



 『おい、なんか命綱が急に軽くなったような気がするんだが……』
 『それよりあれを見ろ!』
 メガネの男が指を指した先には、三角屋根のテントが少しだけ立ち並んだ、小さな村があった。

 「本当に村、あったんだ……」
 「良牙の奴はいねぇのか?」
 「だから、いるわけないでしょ。」



 『そういえばおまえさんたち、バンダナにリュックの男を見かけなんだか?』
 『それって……誰のことですか?』
 『おまえさんたちよりも先にここの村に迷い込んできた青年でなぁ、ここから帰りたい、帰りたいと言ってさっきからずうっとこのあたりを歩いておるんじゃ。』

 「それって……もしかして良牙くんのこと?」
 「今頃気づいたか。」

 『ここから帰るなんて無茶なことを言わずに、ここに永住したらいいのにのう……あんたたちも永住しなはれ!』
 『そうですか……ところがぎっちょん、今日の我々はちゃんとこの命綱を持っています!なら我々は、その青年を見つけだしてこの森を横断し、ちゃんと帰して……』
 その時……
 『たっ、大変です藤井さ〜ん!』
 カメラの後ろで叫び声がした。
 『どうした?』
 『命綱が……切れてます…………』
 『なんだってぇ!?』


 取材班がそこへ駆けよると、見事に命綱が切れていた。片方は取材班の人たちが持っていたのだが、切れたもう片方はどこへ行ったのかわからない。その近くには、どういうわけか大きな穴が空いていた。
 『そんな……昔より倍の太さにしたというのに……』
 『ここら辺はよく熊も出ますからなぁ、それに切られたんだろな。そんなわけで、ここに永住しなはれ。』
 『…………』
 取材班の人たちはへなへなと地面に倒れた。


 「あの人達、どうなっちゃうんだろう……」
 その時、どこからか
 「大漁じゃ大漁じゃーい♪」
 八宝斎が茶の間に走ってきた。背中にはもちろん、あれを背負っている。
 「ったくこのじじい、まーた人様に迷惑を……」
 「別に迷惑なんかかけとらんぞい。そうじゃ乱馬、久々に女になってくれんか?最近なかなか見てないからのう。」
 「誰がそんな理由で女になんかなるかっ。」
 「まぁいいではないか。」
 八宝斎はそう言ってどこからか持ってきたバケツの水を乱馬へかける。
 「おぉっと!」
 それを乱馬は軽く避けたが、

  ばしゃっ

 「あ゛………」
 水はテレビにかかってしまった。

  バチバチバチ……ぶすっ

 もちろん、テレビは火花を散らして……壊れた。
 「あんた……テレビ壊してどうすんのよっ!?」
 「俺のせいじゃねーだろ!」
 「今のは避けたおぬしが悪いぞいっ。」
 「そういうじじいが一番悪いんだろーが!」

  どぎゃん

 そう言って乱馬は八宝斎を空高く蹴っ飛ばした。
 「でも、やっぱり弁償するのは乱馬くんじゃない?かけたおじいちゃんも悪いけど、あんたが避けてなかったらテレビは壊れなかったんだから。」
 「なびき、おまえなぁ……」
 「私に20万払ったら弁償しなくていいけど?」
 「う…………」





 そして、数日後………。
 『ぶきっ♪』
 「あ、Pちゃんおかえり!どこ行ってたの?心配したんだから……」
 「さて、どこに行ってたのかな?」
 「乱馬くん、ちゃんとテレビ壊した責任とってよね。」
 「だ、だから、ありゃ俺じゃなくてじじいが……」
 「あんたも同じよっ。」
 「…………。」

 その後、あの取材班がどうなったのかは誰も知らない。
 さらに、良牙が初めて青木ヶ原を無事に横断したことは本人すら知らない……。

執筆最終更新日:2003年6月2日
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短編キャラがほとんどあの森の住人とテレビの取材班しかいないと言う事について決して気にしないでください(汗)
あの森に良牙が迷い込んだらどうなるのかな〜っと思っていたらどんどん話ができて……。
最後が無理矢理終わらせたような感じになっているのもあまり気にしないでください。

……青木ヶ原が実在すると知ったのはこれを書いてから半年以上後の事です、知ってたらこんな話書いてません(爆

るーみっくへ
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