良牙、あの森に迷い込む!?(前)
〜数日前〜
「えぇと……こうして使えばいいんだなっ!?」
「だから何度もそうだと言ってるだろーがっ!」
「はい……ありがとうございますっ!」
良牙はある店で方位磁針を買った。これがあればどんな場所でも東西南北がわかるらしい。いくら方向オンチな良牙でも北に行けば北海道、南に行けば沖縄があることぐらい知っている。店の人に呆れられるほど何度も説明を聞いてから、良牙は店を出た。
(よし……これからは簡単に天道道場へ行ける!)
と良牙は思ったのだが……。
……今。
(ここはどこだ……?)
良牙は森の中を歩いている。ちょっと前までは富士山の横を歩いているはずだったのに、いつの間にか全然見通しのきかない原生林。肝心の方位磁針はどういう訳か竜巻のようにぐるぐる回っていて、さっぱりわからない。
(ちくしょう、どうなってんだよ……!?)
すぐそばに方位磁針を持ったままの白骨死体があるのを知らずに良牙は歩いていった……。
一方、こちらは天道道場。
「おねーちゃん、今日このテレビ見ていい?」
あかねが新聞を見ながら言った。なびきも新聞に顔を突っ込む。
「何々、『スペシャル特バン……23年ぶりに秘境・青木ヶ原横断に挑む!あの時の謎の村は今もあるのか!?そして、今度こそは青木ヶ原を横断することができるのか!?しかも今回は23年前のマル秘映像も加えながら生中継でお伝えします!!』……なんだかよくわからない内容ね。」
「いいじゃない、おもしろそうでしょ?」
「まぁ……別にこの時間私は見たいのないからいいわよ。」
「ん?何を見るんだ?」
その話に乱馬が入る。
「これよこれ。」
「ほー…まるでPちゃんがいそうな場所だなぁ。」
「なんでPちゃんなのよ。」
「最近見かけないだろ?だからそういう所にいねぇかなって。」
「もう、いるわけないじゃないっ。」
(本当に……ここはどこなんだ……?)
相変わらず迷い続ける良牙。
ガサッ……
「ん?」
何か音がしたような気がして振り向く。すると、そこにいたのは…
『がるっ』
……トラだった。
(何でこんな所にトラが……?)
一旦目をこすってよく見たが、やっぱりトラはトラである。
『…ガルルルッ!』
「!?」
トラは良牙に襲いかかってきた。
(本当にどうなってんだよっ!?)
ちゃんちゃかちゃんちゃんちゃーん……
『スペシャル特バンこれから始まる!しかも今回はスペシャルの中のスペシャル、なんと生放送ー!!』
「あ、始まった始まった!!」
「あかね、あんた本当にこういう番組好きねー。」
「………」
興味津々なあかねととりあえず見るなびき、かすみ。乱馬は全然興味がないのか、そばにあるせんべいをぱりぱり食べていた……。
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