す〜ぱ〜るーみっく(最終話)   〜新たな生まれ変わり〜




 ※原作犬夜叉が22〜23巻辺りに予定していた話です。
  どうするのか悩みましたが、結局当時の予定通りに書いているので今の犬夜叉の状況と随分違います。




 奈落の最期……それは壮絶な闘いだった。鋼牙のかけらも奪われ、琥珀の持っている分を除く全てのかけらを奈落が手に入れた中での死闘だった。犬夜叉一行、殺生丸、鋼牙、そして桔梗によって奈落は倒された。最期のとどめを刺したのは桔梗だったが、深い傷を負ってしまった……。
 「…終わった……」
 そうつぶやくと同時に、地面に倒れ込む桔梗。
 「桔梗、大丈夫!?」
 「ああ…」
 駆け寄るかごめに桔梗はそう答えるが、全く大丈夫ではない。
 「それよりも……」
 桔梗は奈落がいた場所に残された四魂の玉を見つめる。
 「四魂の玉を……私の元へ……」
 「え、ええ……」
 かごめは言われたとおりに玉を拾ってくる。奈落が死んでなお汚れていた四魂の玉は、かごめが持った時点で邪気が薄くなり、桔梗の手に乗せられたときには完全に浄化されていた。
 「桔梗……琥珀のことは……」
 「……二度と他へ渡らせないと誓うなら、そのままでよい……」
 玉は完全ではない。琥珀の分がなかったのだ。しかし、琥珀からかけらを取り上げてしまえば、琥珀は死んでしまう。そのことは、桔梗もよくわかっていた。
 「わかってるよ。かけらを失うことは、弟を失うことだから。」
 「私も精一杯お守りします。」
 奈落を倒してからもずっと真剣な表情をしていた桔梗だったが、ここへ来てようやく少しだけ笑みをこぼす。この世に一つも未練が無くなったかのように。
 「……これから私は、この四魂の玉の力であの世へ行く……」
 四魂の玉が白く輝き始めた。その光は桔梗の体を包んでいく。
 「い、いきなり何言いやがるんだよ!?」
 「私は元々死人だ。この世にいていい物ではない。」
 輝きはどんどん強くなり、桔梗の姿が見えなくなるほど。今にも空へ舞い上がりそうなのだが、それをとっさに犬夜叉が抱き止める。
 「でも……!」
 「それに、犬夜叉……おまえにはもう、私よりも大切な人がいるのだろう?」
 「!!」
 そう言う桔梗は、明らかにかごめを見ていた。姿は見えないはずなのに。
 腕をだらんと下へ降ろす犬夜叉。同時に、再び光は空へ上がり始める。
 「私はあの世へ行く……だが犬夜叉、これだけは約束しろ。」
 声も、少しずつ小さく、聞こえづらくなっていく。
 「……私はいつか、かごめ以外の女に……今度こそ普通の女に生まれ変わる。その時は、犬夜叉……おまえも人間に生まれ変わって、私の隣にいて欲しい……」
 そして、声も光も、四魂の玉も消えた。桔梗のいた場所には、犬夜叉とかごめが立ち尽くすのみ。
 「桔梗―――――!!」
 空へ犬夜叉の声が響いた。



 奈落を倒して一年。
 あの後、犬夜叉は妖怪でも人間でもなく、半妖のまま生きる道を選んで旅に出た。弥勒と珊瑚、そして琥珀は三人で退治屋の里を再建するという。七宝は楓と一緒に住むことになった。そして、かごめは無事高校に入学。井戸は閉ざされ、もう二度と戦国時代へ行くことはない。部活は弓道部へ入り、一年とはとても思えない腕前だと言われている。しかし、霊力は奈落を倒してから全くなくなってしまった。もうかごめは桔梗の生まれ変わりではないからであろう。
 そんなある日。
 「いってきまーす。」
 普通にかごめが登校しようとしているときだった。
 (何かの……気配!?)
 それは、四魂のかけらとは少し違った……でも、とても懐かしい、不思議な感覚だった。その感覚を頼りに、普段は通らない道を走っていく。
 「きゃっ!?」
 とある道を曲がったところで、誰かにぶつかってしまった。
 「ちょっと、危ないじゃない!」
 「す、すみません……え?」
 よく見ると、ぶつかった相手はあかねだった。
 「かごめちゃんじゃない!久しぶり。どうしたの?」
 そして、あの気配はあかねからしていたのだった。
 「い、いえ……」
 「あかねー、何やってんだ?」
 「ううん、かごめちゃんに久しぶりに会ったから。」
 後から乱馬もやってくる。かごめははっとした。
 (もしかして、あかねちゃんが……!?)
 「ご、ごめんなさい、近道しようとしていただけなので。もう行きます。」
 「え、ちょっと……」
 二人の前から逃げるように走り出すかごめ。
 (そういえば、あの時……乱馬くんは犬夜叉の生まれ変わりだって言われていた。だから……)
 寂しさと嬉しさを同時に感じながら。
 (本当に、普通の女の子になれたのね……)

執筆最終更新日:2008年3月2日
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私がこの話を書き始めていた頃の大誤算。
 第三位:奈落を倒す前に神楽と桔梗が亡くなったこと
 第二位:四魂の玉が完成し、かつ琥珀が生きていたこと(四魂の玉が完成せずにずっと琥珀の中にかけらが残っているか、琥珀の死と引き替えに玉が完成すると思っていた)
 第一位:鋼牙が戦線離脱したこと
第一位についてはその話の時から何度も何度も日記でギャーギャー言ってますが・・・そのくらい大誤算・・・というか、好きなキャラが出てこなくなるのが嫌だったと言うのが本音か。
本当に最終話を予想するのは難しい。響鬼の終わり方には最初どう日記に感想書けばいいのかわからなかったし(とにかくいきなり一年後ってなんなんだ)、電王は絶対いなくなると思っていた人々が生きていてよかったし、ドラマ版1ポンドの福音に至っては最終話の一話前(=原作最終話)でてっきり終わってしまったと思って最終話を見逃したし(爆)。結局、私が見たのは二話の後半と、七話と八話のみか。ドラマが始まる前に原作読めばよかったなぁ・・・って話ずれすぎだ!!
この後、しばらく小説は書かないと思います。他のことがいろいろ大変なので。ネタは結構あるんですけどね・・・書き方がよくわかっていないんで・・・。
気がついたときにはまた何か書いているかもしれません。

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