乱馬骨折の災難……そして乱馬は乙女座?




 8月31日、昼……。
 「ただいまぁー。」
 この日は、乱馬と玄馬が一週間の山ごもりの修行から帰って来る日なのだが、乱馬の声は重い。
 「おかえりー……って、どうしたの、その腕。」
 あかねの声が途中で変わった。乱馬が右腕の肘から手首のところまで、ギプスをはめ、そこを包帯で巻かれている。
そして、その腕を肩から布でぶら下げて。
 「……見たまんまだよ、あかね。」
 乱馬は少しうつむきながら言った。



 「これは一体どういうことかね、早乙女くん。」
 早雲が乱馬の右腕を見ながら言った。
 「いや、わしもそれがよくわからないのだがね、天道くん。」
 「半分おやじのせいじゃねーか。」
 乱馬はそう言いながら玄馬の頭を左腕で殴った。
 「じゃあ、残りの半分は?」
 あかねも言う。
 「俺のせいだよ。」
 「それで、なぜ骨折しちゃったの?」
 「言ってもいいけどな、絶対に笑うなよ。」
 「そんなに変な理由が?」
 「とにかく笑うな。ありゃおとといのことだよ………。」

      ==二日前==

 「こりゃーーっ、乱馬、この父の分のカップラーメンまで食いおってーー!」
 「うるせーっ、早い者勝ちだーーーっ!」
 乱馬と玄馬はいつも通りに修行(ケンカ?)をしていた。ちなみに、テントから200mほど先は先のとがったかなり底が深いガケである。そして、二人は争っているうちに、そのガケの上にまで来た。
 「食べ物の恨みはすごいんじゃぞっ!」
 「おやじはたいしてすごくねーくせに。」
 乱馬はそう言いつつ玄馬の頭を踏みつけ、玄馬の頭は地面にぶつかった。そのとたん、頭をぶつけたところから地面にぴしぴしとヒビができはじめた。ここの地面はかなりもろいようである。
 「え゛?」

  ぼろっ、どどどど………

 そして、先の岬のようなところが崩れ落ちてしまったのである。
 「でぇぇぇぇっ!?」
 玄馬は別に落ちなかったが、乱馬は一緒に落っこちてしまったのだ。

      ==今日==

 「それで、なんで腕を骨折したの?普通それでするようなところじゃないじゃない。」
 「そうねぇ、乱馬くんはちょっとしたガケなら無傷だし。」
 「あれ、おねーちゃんいつからここにいたの?」
 「今の話にそんなことは関係ないでしょ。」
 「おい、話を最後まで聞けっ!」

      ==二日前の続き==

 乱馬は頭から落っこちていた。もちろん、このままだとただではすまないが、なかなか乱馬は頭から落ちている状態のまま体勢を立て直せない。
 (しゃーねえ、頭ぶつけねーようにするにはこうするしかないのかっ。)
 乱馬は、なんと逆立ちの状態で底に手をついた。しかし、

  ごきっ

というような音が右腕からすると、そこにものすごい痛みを感じ、逆立ちをした体勢から倒れてしまった。
 「ててて………どうなってんだよ。」
 とりあえず足は大丈夫だったため、元の場所に戻ることはできた。
 そして、乱馬が自分の右腕を骨折したことにわかったのは山を下りてからだった。

      ==今日==

 「東風先生に診てもらったけど、折れたと言うよりヒビが入っただけだから、一ヶ月ぐらいで完治するってさ。」
 あかねとなびきは笑うどころがあきれかえっていた。
 「…心配して損した。逆立ちして折るなんて。」
 「乱馬くん、右腕弱くなってたりして?」
 「あのなぁ……。」
 「あ、えーと、乱馬、それよりも明日新学期よ。準備できたの?」
 あかねは話がやばくなりそうだったのでとっさに言った。
 「あっ、全っ然してねーや!」
 乱馬はそんなことを知らないで居間から出ていった。
 (ふぅ……なーんか嫌な予感がするんだけどなぁ……。)
 あかねの予感は当たっていたりする…………。


 次の日。
 利き腕を骨折しているだけあって、なかなか箸が使いにくい。
 「いってきまーす。」
 あかねは先に行ってしまう。
 「おい、待てよっ。」
 乱馬も朝飯を食べ終わらずに行った。少し走ればすぐあかねに追いつく。そしてしばらく歩いていると、九能が向こうから走ってきた。
 「天道あかねぇーーーーっ。一ヶ月ぶりだーーーーっ。逢いたかっ……。」
 「はいはい、会えてよかったですねっ!」

  ばきぃ

 九能はあかねに殴られ、空高く飛ばされていく……。
 「乱馬、九能先輩があんたをねらってこなくてよかったわね。」
 「ふん、もし俺に来たら思いっきり蹴飛ばしてやらあ。」
 そう言いつつ、乱馬はフェンスの上から降りた。そのとたん、おばあさんが水まきをしていた水をかぶってしまった。
 「………。」
 「何やってんのよ。」
 その時、何かが来るような感じがした。ちょうどさっき九能があかねに殴られて飛んでいった方から。
 「おーーーーっ、おさげの女、逢いたかったぞーーーっ!」
 どういうわけか、九能が飛ばされた方からまた飛んできた。
 「俺は会いたくなんかねーんだよっ!」
 「照れるな、おさげの女。ちゃんと本音を話してくれないか。」
 「だから会いたくねーのが本音だっ!もっ回飛んでけっ!」

  どっかん

 らんまはさっき言った通りに九能を思いっきり蹴飛ばし、さっきよりもさらに高く、遠く九能は飛ばされていった。
 「ったく、これじゃ遅刻しちゃうわよ。」
 「んなこたわかっとる!」
 二人は学校へ走っていった。


 ぎりぎりで乱馬とあかねは学校に着いた。
 右京が乱馬を見たとたん、そこに近寄ってきた。
 「乱ちゃん、どないしたんや、その腕。」
 「いや……ちょっとな………。」
 「乱馬がケガしたってぇ?珍しいな。」
 「なに、乱馬が骨折?そんなこともあるのか。」
 よっぽど骨折しているのが珍しいのか、乱馬のそばにたくさんのクラスメイトが寄ってきた。
 「あのなぁ……俺は見せ物か?」
 とりあえず、右腕が使えないからと言ってそんなに不便なことはなかった。鉛筆が使いづらかったこと以外は。
 んで放課後。乱馬が骨折したという噂はもう学校中に広まっていた。
 「早乙女乱馬、覚悟〜〜〜〜!」
 どうやら噂は九能にも届いていたらしい。しかし、乱馬はいつものように木刀をよけ、いつものように蹴り一発で九能を飛ばした。
「ったく、うっとうしい。」
 しかし、もっとうっとうしいのが来た。
 「あいやー、乱馬。ケガしたの本当だたあるか。今度の日曜見舞いに来てもいいあるか?」
 「でぇ、シャンプー!おめー、いつからここに……。」
 「いいみたいあるね。今度の日曜見舞いにくるから待っているよろし。」
 「お、おい、シャンプー!」
 シャンプーは乱馬の返事も聞かずに去っていく。
 「ったく、人の話も聞かねぇで……。」
 しかし、これだけでは終わらない。
 「乱ちゃん、今度の日曜日見舞いに来るけん、待っててや。」
 「え、いや、別に対したケガじゃないし。」
 「まぁ、そんなこと言わんといで。じゃ、うち帰るな。」
 「ちょっと待てよ、ウッちゃーん!」
 そして……。
 「まあ、乱馬様。お怪我をなされたというのは本当でしたのね。今度の日曜日、お見舞いに来ますわ。」
 「こ、小太刀もかよ!おめーは来なくてもいいっ!」
 「乱馬様、そんなに照れてしまって。わかりますわ、本当は来て欲しいって。待ってて下さいね。お〜〜〜ほほほほほっ!」
 「小太刀ぃーーっ!」
 小太刀は黒バラ吹雪とともに去っていった……。
 「いいわねぇ、こんなにもてて。」
 「好きでもててんじゃねえっ!」



 で、その日曜日………。
 シャンプー、右京、小太刀はそれぞれ同時刻に天道道場に向かった。しかし、三人はそれぞれ他の二人も乱馬のところに向かっているのを知らなかったらしく、三人ばったりであった瞬間、口げんかが始まった。
 「ちょっと待ちな。乱ちゃんの所に行くのは、このウチや。」
 「何言うある。せっかく乱馬のために手作り肉マン作ってきたあるのに。」
 「乱馬様はこの私の物ですのよ!」
 「何言うてんねん。乱ちゃんはウチの許嫁や。」
 「私は乱馬と結婚しなくちゃいけない運命あるね。」
 「乱馬様は私の物だということがわからないのですかっ!」
 口げんかは、しだいに武器を使ったケンカになっていった。そして、三人はケンカをしながらも天道道場に向かいつつあった……。

 話は天道道場に変わる。
 「乱馬、どこ行くの?」
 「いや、ちょっと散歩にでも行こうかと……。」
 乱馬はそんなことを言っているが、本当はシャンプーとか小太刀などに会いたくないだけだったりする。あかねにはバレバレであったが、会いたくない理由もわかるので、別に止めようとはしなかった。
 しかし、道場の門を乱馬が出ようとしたとたん、

  どか ばき みし……

右京のヘラと小太刀のクラブとシャンプーのぼんぼりが同時に当たり、のびてしまった。
 「二人とも、この私の乱馬様に何をするのですかっ!」
 「それはこっちのセリフあるっ!」
 「そう言ってる方も乱ちゃんにしたんやないかっ!」
 乱馬が気がついたのは十分後。まだ三人の決着はついていないまま。
 「ててて………。」
 「乱馬、無事だったあるか。さっそくこの肉マン食べるよろし。」
 「その前にウチの作ったお好み焼き食べてや。」
 「あら、乱馬様は私の作った料理しかお食べにならないのですよ。さあ、早くこれをお食べになりまして。」
 どうやら食べ物を持ってきたのはシャンプーだけではないらしい。乱馬は五分ぐらい迷ってから言った。
 「じゃあ、この戦いに勝った人のから順番に食べる。だから……。」
 「それはいい考えある。さっそく勝負するある。」
 「って、それはさっきからやってることやんけ!」
 「とにかく、乱馬様には私の作った料理しかお口に合いませんのよっ!」
 三人がケンカをしているスキに、乱馬はこそこそとその場から逃げていった。三人がそれに気づいた頃には、もう乱馬はどこにも見えなかった。
 「あいやー、乱馬どこいったあるか。」
 「乱馬様はいずこっ。」
 「乱ちゃん、どこいったんや。」
 三人はバラバラになって乱馬を探しにいった……。

 乱馬は道場の裏にいた。ただ、あの後川に飛び込んだため、女になっている。小太刀には狙われないからだ。
 (はぁ、ったくびっくりしちまったぜ。)
 そう思っていると、どこからか九能が走ってきた。
 「おーーーっ、おさげの女〜〜〜〜。ケガをしたというのは本当だったのかーーーーっ!」
 「あーっ、もううるさいっ!」

  どかっ

 らんまは九能を蹴り飛ばした。
 (そうか、小太刀に狙われねぇと言うことは、逆に九能に狙われるのか……もうみんないねぇよなぁ……。)
 とりあえずらんまはそう思い、道場に帰った。しかしそこには
 「あいやー、やっと帰ってきたあるね。」
 「げぇ!」
 シャンプーがいた。ずっとここで待っていたらしい。
 「さっそく、この肉マン食べるあるね。」
 「いいわねぇ、本っ当にあんたのこと心配してくれる人がいっぱいいて。」
 「あのなぁ〜〜〜〜!それにこれ、冷めきってるじゃねーかよ!」
 「それはいつまでたってもこない乱馬のせいあるね。」
 シャンプーは笑顔で言いつつ、そばにあるバケツの水をかぶった。
 「にーにーにーにーにー………。」
 「ひぃぃぃぃっ!すみませんでした、すみませんでしたあっっっ!」
 「もう、情けないわねぇ……。」
 あかねがそばであきれながら見ていた。



 なんだかんだあって一週間がすぎた。
 乱馬は東風先生のところにいる。
 「よし、あと一週間ぐらいで完治するよ。ただ、それまではあまり強い衝撃を与えないようにね。」
 「わかった。サンキュー、先生!」
 というわけで、もうすぐこの話は終わ…………らなかったりする。
 道場に帰ってからのこと。
 「腕どうだった?」
 あかねがいきなり聞いてくる。
 「ああ、あと一週間で治るってさ。」
 「よかったじゃない、思ったより治るの早くて。」
 「それはどうかしら。」
 なびきも話に割り込んできた。
 「え?」
 「だって、今週の乙女座は『全部の運が急低下、最悪の一週間』って立ち読みした雑誌に書いてあったもん。」
 「おい、どこに俺が乙女座だという証拠があるんだよ。」
 「乱馬くんは半分女だから。」
 「おいおい………。」


 しかし、本当に当たっていた?らしい。この六日間、よくネコに出会ったり(最低でも20匹ぐらい)、九能やらシャンプーやら小太刀やら他にもいろいろ迷惑なやつらにもよく出会う。昨日なんか、良牙でもないのに学校の帰り道に迷子になりそうになった。
 んで、その週の最後の日の朝。
 「なあ、俺って本当に乙女座なのか?」
 「そんなことはこの父でも知らん。」
 「でも、おねーちゃんが言ってたこと当たってたじゃない。」
 「そういえば、『一番最後の日が一番最悪の日』って書いてあったような気がするけど。」
 「これ以上どんなことがあると言うんだよ。」
 「さあ。そんなこと私は知らない。」
 この日、乱馬とあかねは普通に家を出た。途中で九能がいつものように走ってきたが、乱馬もいつものように顔を踏みつける。学校でもそんなにやばいことはなかった。あるといったら昼休みの時ぐらい。


 「乱馬くん、まだ何もないの?」
 「ああ。やっぱおれは乙女座じゃねーと思うけど。」
 「じゃあ、私がしてあげようか。」
 「へ?」
 なびきはカバンの中から本物そっくりのネコのぬいぐるみを出した。しかし乱馬にはそれが本物に見えたらしい。
 「ぎゃ〜〜〜〜っ、ね゛ごね゛ごね゛ご〜〜〜っ!!」
 「ほーらほら、かわいい子ネコちゃんだよ〜っ。」
 乱馬は最初は逃げ回っていたが、十分ぐらいたってやっと何か変なことに気づく。
 鳴きもしないし、動きもしない。おまけに動物を持ち込んでくるのは禁止のはずだ。
 「おめー、もしかしてそれ……。」
 「あ、やっと気づいた?これ、ただのぬいぐるみ。」
 「なにからかってんだよーっ!」
 「あ、もう昼休み終わっちゃう。じゃーねっ。」
 「………。」
これくらいである。



 この日の夜。
 「結局、何もなかったじゃねーか。」
 「まだわからないわよ。」
 「おねーちゃん、”わからない”ってたとえば?」
 「え〜〜とっ、今から一時間後に隕石が落ちてくるとか。」
 「んなことあるかっ。」
 「あ、かすみおねーちゃん、ごはんおかわり。」
 そんな時である。
  <ちゅどぉーーー……ん>
 「あれ?今なんか花火とか上がった?」
 「夏祭りは一ヶ月以上前に終わっただろーが。」

  ひゅるるるるる………

 「ひゅるるるるる?」
 「まさか、本当に……?」

  どっかん  ぶち……ぐきっ

 落っこちてきたのは隕石ではないが、水をかぶった状態のパンスト太郎だった。それに乱馬が下敷きになり、その時、また右腕からあの時のような音がした。
 「ったく、どうなってんだよ………い゛、い゛ででで!」
 乱馬が下から出ようとしたとたん、右腕にさっきまでよりももっと強い痛みが走った。ちなみにパンスト太郎はやけどを数カ所して気絶していた……。


 パンスト太郎にお湯をかけて人間に戻し、話を聞いてみたところ、いいかげんに名前を変えて欲しくて八宝斉にまた勝負を挑んだのだが、十尺玉(百号)ほどの大きさの八宝大華輪をもろに受け、そのまま墜落したのだという。そして、乱馬はというと………。
 「あちゃー、前よりひどくなってる。また一ヶ月ぐらいそのままにしておかないと、治らないよ。」
 「…もう少しで骨折が治ると思ったのに……。」
 「やっぱり占い当たってたじゃないの。」
 「まったく、治るのはいつのひなんだか。」
 「本当に俺は乙女座なのかっ!?」
 「かもね。」
 「本当に右腕、弱くなってんのね。」
 「おいおい……。」
 本っっっ当に治るのはいつの日なんだか……。

執筆最終更新日:2001年10月4日

これ……私が初めて作って、初めて他のサイトに投稿したるーみっく小説です。中一の夏休み中に書きはじめました。
自分が小三の時左腕(私は左利きなんです)を骨折してなんやかんやあったので、もし乱馬が骨折したらどうなるのかなといった感じで書いていたような気がします。
乙女座だというのは……私も乙女座だから。一旦そこら辺でネタが詰まったのです(汗)
もうごちゃごちゃな所がいっぱいで、改行もヘタクソで、自分で読んでいると途中で目をそらしたくなるほどです。
でも、一応最初の記念作(?)でもあるんだよなぁ……

るーみっくへ
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