民間伝承集北陸編…N県K市地方…犬使いの由来




 ―――それはかなり昔の事―――


 その頃は様々な妖怪が数多く住み、人々から恐れられていた時代。
 今のN県K市の辺りもその例外ではなく、妖狼族という、狼の群を伴う妖怪にたびたび襲われていた。


 ある日、すぐ隣にあった集落が、妖狼族によって滅ぼされてしまった。なんとか逃げてきた人の話によると、その頭はとても足が速く、逃げようとした村人にもすぐに襲いかかっていったという。次はこの村が襲われるかもしれなかった。
 そこで、村人達が集まって話し合いをした。相手は力のある妖狼族。簡単な柵なら壊されてしまう。防ぐには守るだけではなく攻めも必要だという結論には達したが、どうやって攻めるかとなると、話は全然進まなかった……。

 そうしてまともな準備も出来ぬまま、村は妖狼族に襲われてしまう。村人のほとんどは逃げまどい、一部はとりあえずクワや鎌を持って挑んだが、結局半分以上が獲物にされてしまった。狼の一匹や二匹は何とか倒せても、囲まれてしまうとどうしようもなかったのだ。

 数ヶ月後、その村が半分位復旧できてきた頃、再び村人による話し合いが行われた。そしてその結論。
 ――相手は人間に近い姿の物もいるが、ほとんどは人食い狼の群。数が多いから強い。それならば、こちらも何か群れを作らせればよい。――群れは狼に近い犬。
 この時、犬使いの原型が出来た。

 村人達は山から犬を捕まえてきたり、他の村からもらったりして、犬を増やし、調教した。最初はただ教えているだけだったので、逃げてしまう犬もいたらしい。が、中には犬の事を思い、犬の考える事がわかってくると、気持ちを通じて犬を自在に操る事の出来る人も出てきた。その人が、一人目の犬使いだっただろう。
 一方、妖狼族の方はただ変な事をしていると感じただけでそう気にはしなかった。村が完全に復興してから襲った方が、獲物が多くなると考えたのだ。


 そして、再び妖狼族がこの村に襲いかかってきた。村人も犬の群れで応戦した。人食い狼と犬の戦いはほぼ互角だったが、それでも妖狼族の頭は焦った。こんな山中の人間の村でなかなか獲物が手に入らず、逆に狼が犬なんかにやられているのだから。
 頭もかなりの数の犬を蹴飛ばし、引き裂いた。しかし、自分の狼たちはかなりやられている。こんな変な村よりも他の普通の村を襲った方がいいとでも思ったのか、途中で生き残りの狼たちと共に脱兎の如く退却した。
 かなりの犬が死んでしまったが、この村の村人はほとんど殺されなかったのだ――。


 それから、この村とその噂を聞いた周りの村では、妖怪が襲ってきた時の守りとして、犬を操る犬使いがいるようになった。
 しかし、そのうち犬使いの中には人を犬で襲い、強奪や殺戮を繰り返す犬使いも出てきた。その話は、「犬塚の由来」の方で取り上げる。

 ついでに、この妖狼族の頭はそれからというもの、犬が大嫌いになったという……。

執筆最終更新日:2004年7月4日

短編を知らない人には全くわからない話になってしまった(汗
考えた時はよしっ!って思っていたのですが書いて読んでみると、かなり微妙な出来……また、これは昔話風にしてみたのでセリフは全くありません。
でもって、更に鋼牙を敵役にまわらせてしまっています。好きな人ごめんなさい。

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